水戸家庭裁判所麻生支部 昭和34年(家ロ)2号 決定 1959年10月22日
申立人 谷口藤吉(仮名)
事件本人 谷口やい(仮名)
未成年者 谷口美子(仮名)
主文
事件本人に対する昭和三四年家第三八四号親権喪失事件の審判確定にいたるまで事件本人の未成年者に対する財産管理権の行使を停止する。
(家事審判官 広瀬友信)
参考
事件の実情
一、申立人は本件親権に服する谷口美子の祖父である。
二、事件本人は昭和二十七年十二月十六日申立人の娘谷口のりの長女即ち申立人の孫に当る谷口美子を事件本人の夫谷口佐吉と二人で養子に貰いたり。
然るに夫佐吉は昭和三十二年一月十八日死亡したり。
三、因つて事件本人は亡夫の遺志をつぎその父であり事件本人の義父である申立人に対して孝養扶助をすると同時に養子である美子の教養に従事しその一家をささえて行く義務がある。
尚亡夫の遺産は昭和三十二年九月四日水戸家庭裁判所麻生支部に於いて遺産分割の調停により事件本人と養子美子の取得財産は確定して居る。
四、処が事件本人は夫の死亡後僅か二ヶ月後に行方郡○○町○○の早川某なる男と情交を結び事件本人は情夫の家へ押かけて行き宿泊を度々続け居るを以て病床に居る申立人藤吉を全然顧みない従つて申立人が病気が急変したような時は近所の人等が医師を呼んだり家の世話をして呉れる始末なり。
かかる有様にも拘らず事件本人は前記の情夫を自家へ引入れることを親戚へ申出たが反対されたるに義父の申立人を甘言を以つて遂に許可を得て情夫を引入れてしまつた。
五、申立人としては事件本人が家を完全に保つて行かるれば止むを得ないと考えていたが事件本人は淫楽にふけり二人で温泉や遊山に出あるき沢山遊興費等に非常なる出費が嵩み之れがため財産を費却し殊に養子美子の不動産(家屋敷)も費却してしまつた。
以上の次第なるを以つて到底未成年者谷口美子の親権をまかせて置くことは実に危険である。
申立人は老衰で病身であり孫美子の成人迄事件本人にまかせて置くことが出来ないから茲に意を決して事件本人に対して美子に対する親権喪失の宣告の申立をする次第である。